これから10年、今の仕事を続けられるのか。
お金の問題だけじゃなく、体力のことも考えるようになった。
「まだ働けるうちに、働き方を変える」ことも考えておきたい。
この3行を書いたところで、手が止まっていました。書けなかったのは、自分の中で答えが出ていなかったからです。
この記事は、同じことを考え始めた40代の方に向けて、私が今どう整理しているかを書きます。
「あと10年、この仕事を続けられるのか」と考えるようになった理由
47歳です。定年までは、まだ13年あります。再雇用まで入れれば、もっと長い。
数字だけ見れば、先の話です。
それでも「あと10年」と考えるようになったのは、ある日の閉店作業のときでした。
バックヤードで在庫を動かしていて、腰を伸ばすのに数秒かかりました。それだけのことです。若い社員は先に上がっていて、誰も見ていません。
ただ、そのとき思いました。これ、10年後もやっているんだろうか。
小売業に22年います。立ち仕事です。棚を動かし、重い箱を持ち、朝から晩まで店にいる仕事です。22年、当たり前にやってきました。
その「当たり前」が、少しずつ重くなっていることに、その日はじめて気づきました。
お金の計算だけでは、この不安は消えなかった
私はこれまで、将来の不安をお金で計算してきました。
老後にいくら足りないか。4%ルールで取り崩すといくらになるか。あと何年でサイドFIREの資産に届くか。家計簿もつけています。数字はだいたい頭に入っています。
それでも、この不安は消えませんでした。
理由が、最近わかりました。
私の計算は全部、「60歳まで今と同じように働ける」という前提で組んでありました。
資産がいくらになるかという表は、毎年同じ額が入ってくる前提で作られています。今の給料が、今のペースで、60歳まで続く。その一行が、表のいちばん上に置かれたままでした。
でも、腰を伸ばすのに数秒かかった日に気づいたのは、まさにその一行のほうが危ないということです。
お金が足りなくなるより先に、体力のほうが先に足りなくなるかもしれない。
そして体力が先に切れた場合、起きるのは「働けなくなる」だけではありません。働けなくなった状態で、慌てて働き方を決めることになります。
これがいちばん怖いところだと思っています。
「まだ働けるうちに、働き方を変える」という考え方
限界が来てから変えるのと、来る前に変えるのは、同じ「働き方を変える」でも中身がまったく違います。
私は今年、役職を降りて介護時短に入りました。手取りは月7万円減ります。
そのときに実感したのは、こういうことでした。
- 限界が来る前に変える場合:制度を選べます。時期を選べます。数字を確認してから決められます。上司に伝える順番も自分で決められます。
- 限界が来てから変える場合:休職か、退職か、その2つしか残らないことがあります。診断書が先に出て、条件はあとから知らされます。
減る金額は、どちらも似たようなものかもしれません。でも、「自分で選んだ7万円減」と「選ばされた7万円減」は、別のものです。
私が今年やったのは介護が理由でしたが、やってみて思ったのは、これは介護に限らないということでした。
体力も、同じ構造です。
まだ働けるうちに手を打つ、というのは、根性論の反対です。選べる時期のうちに選んでおく、という準備の話です。
あと10年を具体的に考える4つの手順
ここからが本題です。私が実際にやっている順番で書きます。今日、紙1枚あればできることだけを並べました。
手順1. 「何歳まで、今の働き方ができるか」を自分の言葉で書く
最初にやるのは、計算ではありません。
紙に「今の働き方を、何歳まで続けられそうか」とだけ書いて、数字を入れてみてください。
私は「55歳」と書きました。根拠はありません。ただ、60とは書けませんでした。
ここで大事なのは、正確さではなく、60と書けるかどうかです。
60と書けなかったなら、あなたの資産計画の前提も、そこで一度ずれています。それを確認するための作業です。
手順2. 体力が落ちたとき、最初に無理になる業務を1つ書き出す
次に、具体的な業務名を1つだけ書きます。
「仕事がきつい」では対策が立てられません。何がきついのかを、業務名まで落とします。
私の場合は「閉店後の品出しと在庫移動」でした。立ちっぱなしで、重いものを持つ時間です。
1つに絞ると、次の質問が出せるようになります。
- その業務は、役職を外れたらなくなるのか
- 部署が変われば避けられるのか
- 勤務時間が変われば減るのか
ここまで来ると、「働き方を変える」が「どこを変えれば効くのか」に変わります。漠然とした不安が、調べられる質問になります。
手順3. 会社の制度を「いつか読むもの」ではなく「使う前提」で読み直す
就業規則を開いてください。読むのは次の3つです。
- 短時間勤務の制度(介護・育児以外の理由で使えるものがあるか)
- 役職を外れた場合の給与(役職手当がいくらで、賞与の算定がどう変わるか)
- 再雇用・定年後の条件(何歳から、どんな働き方になるか)
制度は、たいてい前からそこにあります。私も、介護時短の存在は何年も前から知っていました。知っていて、使いませんでした。
整っていなかったのは制度ではなく、こちら側でした。
そして、金額がはっきりしない項目があったら、人事に確認してください。伝え方は「制度について伺いたいのですが」で十分です。申請すると決める必要はありません。説明を聞くだけなら、今日でもできます。
確認するときは、必ず手取りで聞いてください。額面で聞くと、あとでずれます。
手順4. 収入が2〜3割減った家計を、1ヶ月だけ試してみる
ここが、いちばん効きました。
働き方を変えられない理由のほとんどは、「減った収入で生活できるかわからない」という一点に集まります。わからないから、決められない。
なら、先に試します。
やり方は簡単です。減る予定の金額を、給料日に別口座へ移してしまう。残った額で、1ヶ月生活します。
私の場合は7万円でした。やってみると、思っていたのと違いました。足りないのではなく、何にいくら使っているかを把握していなかっただけだと分かりました。
1ヶ月で結果が出ます。回るなら、決断のハードルは大きく下がります。回らないなら、どの費目が原因かがその場で見えます。どちらに転んでも、判断材料が手に入ります。
頭の中で不安を転がしている限り、この答えは出ません。
まとめ:今日できるのは、手順1だけです
長く書きましたが、今日やることは1つだけです。
紙に「今の働き方を、何歳まで続けられそうか」と書いて、数字を入れる。
60と書けたなら、それはそれで大きな収穫です。今の計画のままで問題ありません。
60と書けなかったなら、その数字があなたの本当の期限です。そこから逆算して、手順2、3、4に進んでください。
私が今年わかったのは、迷っている時間のほうが長い、ということでした。役職を降りると決めるまでに何年もかかったのに、人事に相談してから決定までは1週間でした。
止まっていたのは制度ではなく、私のほうでした。
「あと10年続けられるのか」という問いに、今すぐ答えを出す必要はありません。ただ、答えを出せる状態にしておくことは、まだ働けている今しかできません。
それだけは、先にやっておきたいと思っています。
——いずみ