前回、「来月から介護時短に入ります」と書きました。
その申請が、終わりました。人事に相談してから、決定まで1週間。来月から、月の手取りは7万円減ります。
この記事は、これから同じ申請をする方のために、実際の手順をそのまま残しておくものです。
## 決めてから連絡するまで、しばらく動けませんでした
制度があることは、ずっと前から知っていました。就業規則も読んでいました。介護のための短時間勤務、期間は3年、ただし役職は外れる。全部、頭に入っていました。
それでも、人事に電話をかけるまでには時間がかかりました。
必要だったのは「介護があるので、時短勤務を検討しています」という一言だけです。20秒で終わる話です。その20秒が、なかなか出ませんでした。
## なぜ、たった一言が言えなかったのか
自分なりに、理由を3つに分けてみました。同じところで止まっている方がいるかもしれないので、正直に書きます。
**1つ目は、「降りる」と口に出すことでした。**
22年勤めて、役職に就きました。その役職を自分から手放すというのは、22年を自分で否定するような感覚がありました。減るのは給料ではなく、自分の値段のような気がしていました。
**2つ目は、職場のことでした。**
人が足りていないのは知っています。私が抜ければ、誰かが持つことになる。その「誰か」の顔が浮かんでしまう。
**3つ目は、戻れないかもしれない、ということでした。**
一度降りた人間が、3年後にもとの位置に戻れるとは思えませんでした。実際、たぶん戻れません。
——ただ、こうして3つ書き出してみて、気づいたことがあります。
**3つとも、制度の話ではありませんでした。全部、自分の中の話でした。**
制度は、ずっと前からそこにありました。整っていなかったのは、私のほうです。
## 背中を押したのは、7万円を最後まで計算したことでした
減る額は、月7万円です。
年間で84万円。3年で252万円。
以前の私なら、ここで止まっていました。252万円は、私が家計簿をつけ始めた頃なら、2年かけて貯める額です。それが消えると考えると、手が止まる。
でも今回は、その先まで計算しました。
**実家にいる間は、時短後の給料で生活が回ります。**
つまり、資産2,400万円には手をつけません。減るのは「これから増えるはずだった分」であって、「今あるお金」ではない。252万円は、失う額ではなく、増え方が緩やかになるだけの額でした。
そして、その252万円で何を買うのかも、はっきりしていました。
親と過ごせる3年と、自分が壊れないで済む働き方です。
**252万円は、出ていくお金ではなく、買い物の値段でした。**
そう置き換えられた日に、電話をかけました。
## 実際の手順:相談から決定まで1週間
ここからが本題です。私がやったことを、順番どおりに書きます。
### 1. 最初の相談相手は、上司ではなく人事にしました
これが、いちばん大きな判断だったと思っています。
普通なら直属の上司に相談するところです。でも私は、先に人事へ連絡しました。理由は2つあります。
ひとつは、**上司は制度の正確な中身を知らない可能性が高い**からです。時短の適用条件、給与がいくらになるか、役職手当がどうなるか。これを正しく答えられるのは人事だけです。曖昧な情報のまま話を始めると、話がこじれます。
もうひとつは、**上司に相談すると「相談」ではなく「交渉」になってしまう**からです。人が足りない現場を預かっている以上、上司は引き止める側に立ちます。それは上司が悪いのではなく、立場がそうさせます。
だから、まず人事で事実を固めました。**先に数字を確定させてから、上司に伝える。**この順番にして正解でした。
### 2. 電話で言ったのは、この一言です
「親の介護のことで、介護短時間勤務の制度について伺いたいのですが」
これだけです。「時短にしたい」ではなく「制度について伺いたい」にしました。
いきなり申請すると言うと、こちらも身構えます。まず制度の説明を聞くだけ、という入り方にすると、電話をかけるハードルが一段下がります。実際、この日は説明を聞いただけで終わりました。
### 3. 聞かれたこと、確認したこと
人事から確認されたのは、介護の対象者との続柄、要介護の状況、希望する開始時期、希望する勤務時間帯です。
こちらからは、必ず次を確認してください。あとで「聞いていなかった」となる部分です。
– 時短後の**手取り**額(額面ではなく手取りで聞く)
– 役職手当・各種手当がどうなるか
– **賞与**の算定がどう変わるか
– 社会保険料と、将来の年金への影響
– 3年の期間の起算日と、延長・短縮の可否
– 有給休暇の日数と時間単位取得の可否
私の場合、月7万円減という数字は、この確認で出てきたものです。
### 4. 提出した書類は「介護短時間勤務申請書」1枚でした
社内様式の**「介護短時間勤務申請書」**です。会社によって「申出書」など名前が違うことがありますが、人事に「介護の短時間勤務の申請書」と伝えれば通じます。
添付として、介護対象者との続柄がわかるもの(続柄記載の住民票など)と、介護の状況を示す書類(要介護認定の通知書、ケアマネジャーの書類など)を求められるのが一般的です。
悩んでいたものの中身が、紙1枚でした。書くところは10分もありません。
**書けなかったのは書類ではなく、出すという判断のほうでした。**
### 5. 上司に最初に言われたのは、「そんなに大変?」でした
書類を出したあと、上司との面談がありました。
最初に言われたのは、この一言です。
**「そんなに大変?」**
責める言い方ではありませんでした。むしろ、心配してくれている口ぶりでした。それはわかっています。
それでも、この一言はこたえました。
伝わっていなかったんだ、と思いました。休みの日が全部、親の買い物と病院の付き添いで消えていることも。言い出せずに就業規則を読み返していたことも。何も伝わっていなかった。
でも、考えてみれば当たり前です。**私は誰にも言っていませんでした。** 前回も書いたとおり、11年、誰にも言わずに一人で用意してきました。言っていないものが伝わるはずがありません。
「そんなに大変?」は、上司の想像力の問題ではなく、私が黙っていた結果でした。
これから申請する方へ、ひとつだけ。**上司は、あなたの生活を知りません。** 面談の前に、休みの日に何をしているかを1つか2つ、事実として言えるようにしておいてください。「大変です」ではなく、「休みは買い物と通院で終わります」と言えるように。そのほうが早く伝わります。
### 6. 決定まで1週間
相談の電話から、正式決定の連絡まで、ちょうど1週間でした。
あれだけ迷ったものが、1週間で終わりました。
**この差が、いちばんこたえました。**
## 申請の帰り、いつも通りスイカとホタテを買いました
書類を出した帰り道、スーパーに寄りました。
買ったのは、スイカとホタテです。どちらも親の好きなものです。いつも通りでした。
自分のためには、何も買いませんでした。
これも、いつも通りでした。
前回、598円の唐揚げに後悔した話を書きました。今回のスイカとホタテには、後悔しませんでした。値段は唐揚げより高かったのに、少しも痛くありませんでした。
最初は、いい話だと思いました。人のために使うお金は後悔しないんだな、と。
でも、書きながら気づきました。**私は「後悔しなかった」のではなく、「後悔しない使い方しか、していない」だけかもしれません。**
自分のために使うと後悔する。だから、自分のためには買わない。そうすれば後悔は起きません。11年間、私がやってきたのはこれです。うまくやっているように見えて、実際は避けているだけでした。
役職を降りて7万円減らす決断はできたのに、自分のために598円を使うことはできない。この2つが同じ人間の中に並んでいます。
**大きい決断のほうが、簡単でした。**
小さいほうは、まだできていません。それが今の正直なところです。
## これから申請する方へ:最初の一歩
長く書きましたが、最初にやることはひとつだけです。
**上司ではなく、人事に電話をして「制度について伺いたい」と言う。**
申請すると決める必要はありません。説明を聞くだけです。それなら、今日でもできます。
私の場合、そこから決定まで1週間でした。止まっていたものが、電話1本で動きました。動かなかったのは制度ではなく、電話をかけるかどうかでした。
もし今、就業規則を開いたまま止まっている方がいたら、順番だけ覚えて帰ってください。
**人事に電話 → 手取りの数字を確定 → それから上司に伝える。**
そして上司に伝えるときは、「大変です」ではなく、休みの日に実際にしていることを1つ言ってください。それだけで、「そんなに大変?」と聞かれずに済むかもしれません。
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次回は、時短1ヶ月目の家計を、全部公開します。7万円減った生活が実際にどうなるのか、数字で書きます。
——いずみ