40代になってから、ふと気づいたことがある。
自分の頭の中に、やたらと「昔」が出てくるようになった。あのとき別の選択をしていれば。あのときもっとちゃんとしていれば。あのとき、あのとき、あのとき——。
過去を振り返ることは悪いことじゃない。でも、いつの間にか過去が「言い訳」になっていたとしたら、話は別だ。
過去に縛られているとき、人は何をしているか
過去に縛られている状態というのは、案外わかりにくい。派手に落ち込んでいるわけでも、誰かを恨んでいるわけでもない。ただ、なんとなく動けない。なんとなく始められない。なんとなく、今の自分に言い訳し続けている。
「若いころにちゃんと貯めていれば」
「あのとき転職していれば」
「もっと早く投資を始めていれば」
全部、今の自分が動かないための理由になっている。
私自身、長い間そうだった。40代に入ってから資産形成を本格的に始めたけれど、それまでの10年近くは「もう遅い」という気持ちがどこかにあって、真剣に向き合えなかった。遅れた分を認めると、それまでの自分を責めることになる気がして、目を背けていたんだと思う。
「遅い」は本当か
40代から資産形成を始めるのは遅いのか。数字で考えると、そうとも言い切れない。
仮に今45歳だとして、65歳まで20年ある。月3万円を年利5%で積み立てると、20年後には約1,230万円になる。ゼロから始めても、1,000万円を超える資産を作れる可能性がある。
「もう遅い」と言って何もしなければ、20年後の残高はゼロのままだ。どちらが「遅い」かは明らかだと思う。
過去に縛られているとき、人は「今から始めることのメリット」ではなく「過去に始めなかったことのデメリット」ばかりを数える。でも、過去はもう変えられない。変えられるのは今日からの行動だけだ。
過去の自分を責めることをやめた日
私がようやく動き出せたのは、「過去の自分はその時点でベストを尽くしていた」と思えるようになってからだ。
30代の自分が投資をしなかったのは、知識がなかったから。知識がなかったのは、誰にも教わらなかったから。誰にも教わらなかったのは、そういう環境になかったから。責めるべき「怠慢」じゃなくて、単純に「情報がなかった」だけだ。
そう考えたとき、不思議と気持ちが楽になった。過去の自分を許せると、今の自分が動けるようになる。責め続けている間は、エネルギーが過去に向かったまま、前に進めない。
変わるための唯一の条件
変わるために必要なことは、たったひとつだと思っている。
「今日」を昨日と違う1日にすること。
大きなことじゃなくていい。家計簿をつけてみる。証券口座を開いてみる。老後のシミュレーションを1回やってみる。それだけで十分だ。
10年後の自分が振り返ったとき、「あの日から変わった」と思える日が、必ずある。その日を、10年前に持ってくることはできない。でも、今日にすることはできる。
過去に縛られていた40代の私が、ようやくそれに気づいた。遅かったかもしれないけど、気づかないよりずっとよかったと、今は思っている。